菊池一族、九州を翔ける③・・・・菊池武敏、多々良浜に舞う

2012 年 11 月 12 日

(黒田長政)

「鎌倉幕府を打倒し、後醍醐天皇の下で始まった建武の新政ですが、足利尊氏の離反で新たな局面を迎えましたね。」

(黒田官兵衛)

「うむ。『箱根竹の下の戦い』で足利軍に敗れた菊池武重は、新田義貞らと共に退却し、足利尊氏は京に迫った。」

(黒田長政)

「新政権にとっては危機的状況ですね?」

(黒田官兵衛)

「しかし、捨てる神あれば拾う神あり。後醍醐天皇に味方する北畠顕家が大軍を率いて東北から南下すると、天皇の命を受けた菊池武重・新田義貞・楠木正成らは総反撃に出た。挟み撃ちにあった足利軍は総崩れとなり、足利尊氏は赤松氏らの助けで九州方面に逃れた。」

(黒田長政)

「九州方面の備えは?」

(黒田官兵衛)

「菊池武重の留守中は、弟で九男の菊池武敏が菊池を守っていた。」

(黒田長政)

「では、そこへ足利尊氏が九州に渡ったとの情報が寄せられたのですな?」

(黒田官兵衛)

「そうじゃ。兄同様に武勇に秀でた菊池武敏は、勇躍3000名余りの兵士を率いて菊池から出陣した。その頃、足利尊氏は地元の豪族・少弐貞経や宗像氏範の支援を受けて勢力回復に努めていた。」

(黒田長政)

「少弐貞経といえば、菊池兄弟の父・菊池武時を裏切って死に追い込んだ張本人ではございませんか?」

(黒田官兵衛)

「その通り。菊池武敏はまず少弐を討って足利軍の出鼻を挫こうと、少弐氏の本拠地・大宰府に攻め寄せた。菊池軍の士気は高く、有智山城に追い詰められた少弐貞経は自害して果てた。」

(黒田長政)

「天罰ですな。」

(黒田官兵衛)

「足利尊氏が都落ちし、それに味方した九州の雄・少弐貞経が討たれたことは、九州各地の豪族に大きな影響を与えた。」

(黒田長政)

「なるほど。今度の戦いは『一応、菊池軍に味方しておいた方がよさそうだ』というわけですな?」

(黒田官兵衛)

「そういうことじゃ。いつの世にも自分のことしか考えぬ奴がおるものじゃ。」

(黒田長政)

「それに比べたら父上の自慢話なぞ可愛いものですな」

(黒田官兵衛)

「だまれえっ!」

(黒田長政)

「それはそうと・・・・。では、それまで日和見だった九州諸国の豪族たちが雪崩をうって菊池氏に味方し始めたのですか。」

(黒田官兵衛)

「うむ。総勢20000名余りに膨れ上がった菊池軍は勢いに乗って博多を攻め、足利尊氏のいる宗像方面を伺うべく、筑前国の多々良浜(福岡市東区)に布陣した。」

(黒田長政)

「対する足利軍は?」

(黒田官兵衛)

「足利尊氏に従ってきた一色範氏や、少弐貞恒の子・少弐頼尚、更には宗像氏範の兵力を合わせても2000名足らず、と兵力では圧倒的に少なかったが、日和見の武将が多い菊池軍に比べて結束力は優っていた。そして、いよいよ開戦じゃ。」

(黒田長政)

「兵力で優る菊池軍としては、緒戦で押しまくり、味方の士気を高めるのが最もよろしいかと?」

(黒田官兵衛)

「いかにも長政が好みそうな戦い方じゃな?」

(黒田長政)

「いや、それほどでも・・・・。」

(黒田官兵衛)

「ワシとしては、お前にもう少し戦いの駆け引きの妙を覚えて欲しいんじゃが・・・・。力任せに攻めまくるばかりが上手い戦ではないぞ。」

(黒田長政)

「・・・・。」

(黒田官兵衛)

「まあ、結局は菊池武敏も長政と同じ作戦を採った。直属の手勢3000を従えて、遮二無二敵陣に斬り込んだ。」

(黒田長政)

「武勇の誉れ高い菊池武敏が大軍で斬り込んで来たとあっては、足利軍はパニックに陥ったでしょう?」

(黒田官兵衛)

「足利尊氏も『もはやこれまでか』と観念したそうじゃ。ところが・・・・。」

(黒田長政)

「えっ?」

(黒田官兵衛)

「足利尊氏を眼前に捉えた菊池軍の風上から強い砂嵐が突如として吹きかけたのじゃ!菊池軍はたちまち大混乱に陥った。」

(黒田長政)

「何と?」

(黒田官兵衛)

「更に、体勢を立て直した足利軍が果敢に反撃に出ると、それまで菊池軍として参加しながら戦いを傍観していた九州各地の豪族は『足利軍、強し!』と次々に足利方へと裏切り始め、菊池軍は総崩れとなった。」

(黒田長政)

「菊池武敏は?」

(黒田官兵衛)

「盟友の阿蘇惟直も討たれ、命からがら菊池へ撤収した。」

(黒田長政)

「盟友の阿蘇一族が戦死するとは、菊池氏にとって再びの大打撃ですね?」

(黒田官兵衛)

「しかし、その位の打撃に耐えられぬようでは『並び鷹の羽(菊池氏の家紋)』の名折れよ。」

(黒田長政)

「どういうことでございますか?」

(黒田官兵衛)

「多々良浜の戦いで勝利し、勢力回復した足利尊氏は再び東上して去った。しかし、後醍醐天皇への忠節を誓う菊池一族は、足利軍と三度見えることになる!」

(黒田長政)

「次回は、『菊池武吉、湊川に散る!』です。乞うご期待!」

(黒田官兵衛)

「ネタをばらすな!」

 

[続く]